天珠は正確な起源がはっきりしないほど歴史のある天然石ビーズの一種で、ネックレスの一部として、また時にはブレスレットとして身につけます。一説ではチベットで2500年前から存在していた、とされています。
天珠の効果と歴史
チベットを含む中央アジアのいくつかの文化では、このビーズは精神的にプラスの効果があると考えられているんです。
これらのビーズは一般的に護符として珍重されており、チベットの伝統的な薬に使用するために粉末状にすることもあります。
その際、ビーズの一部が削られた「ディグ・マーク」と呼ばれる小さな痕跡が残るが、これは薬に使用するためのもの。
また、片方または両方の端が研磨されているものもありますが、これもチベット伝統医学に使用するために削られたものです。
場合によってはタンカの絵画や金箔を貼ったブロンズ像を磨くための道具として使用されたこともあります。
最も高く評価されているのは、天然のメノウで作られた古い時代の天珠です。
このビーズの原産地は謎に包まれていて、伝統的な古代様式のビーズが非常に好まれる一方で、現代的に作られた新しい天珠がチベット人の間で人気を集めています。
最近では、ハーブオイルを使って天珠に注油し、関連する宝石と一緒にネックレスとして身につける方法が紹介されています。
チベット語の “dzi”の意味は、”輝き、明るさ、透明感、素晴らしさ “と訳されています。日本や中国では「天珠」と呼ばれています。
天珠の種類
天珠の多くは瑪瑙(めのう)でできており、円、楕円、四角、波やジグザグ、縞、線、ダイヤモンド、ドットなど、さまざまな原型的、象徴的なパターンで構成された装飾的なシンボルがあります。
色は主に茶色から黒で、模様は通常アイボリーホワイト。
天珠はさまざまな色、形、大きさのものがあり、表面は通常、滑らかでワックスのようになっていますが、これは長い期間にわたって着用された結果だと考えられています。
瑪瑙の自然な模様(通常は「層状」の渦巻き)が、装飾的なシンボルやデザインの下や背後に見えることもあれば、そうでないこともあります。
天珠の中には、「ブラッドスポット」と呼ばれる、白い部分に小さな赤い点があるものがあり、これは鉄分を含んでいることを示しているんです。
また、ビーズの表面に鱗のような小さな円形の風化痕が見られる「ナーガ・スキン」も好ましい効果とされています。
瑪瑙(めのう)を磨いただけのものもあり、石の自然な縞模様以外の装飾がないものもありますが、こちらもまた人気があります。
「目」と呼ばれる円形の模様の数が重要視されていいて、天珠の象徴的な意味は模様の数と配置によって表されます。
古代における天珠
天珠が最初に登場したのは、紀元前2000年から1000年の間、古代インドでのこととされています。
ペルシャから来たチベット人兵士が襲撃の際に数十万個を持ち帰ったとされています。この時代の人々は、「邪眼」の悪影響を非常に深刻に受け止めていました。
邪眼に対抗するものとして考えられたのが「天珠」です。
天珠を作った職人たちは、「目」のついたお守りを作り、「毒をもって毒を制す」という意味を込めました。
瑪瑙(めのう)を原石とし、謎に包まれた古代の方法でビーズの線や形を装飾していました。
植物性の糖分と熱による黒ずみ、天然の炭酸塩鉱物であるナトロンによる漂白と白線のエッチング、グリースや粘土、ワックスなどによる部分的な保護などが行われたと考えられています。
ビーズを装飾する前に穴を開けたのは、穴を開けると製造過程でほとんどの場合破損してしまうからとされ、穴は着色の段階で多数のビーズを連ねたり、ディップしたりするのにも便利です。
新石器時代のビーズは、葦や、後には旧石器時代には銅でできた中空の筒状の研磨剤付きの刃でも穴を開け、これらは筒状のドリルの中にメノウの芯を入れて穴を開けたとされています。
筒状のドリルビットによってあけられた穴は、円錐形ではなく平行な壁で、両端からも開けられました。
どちらの方法も弓型のドリルを使った大変な作業で、砂(石英)やコランダムなどの研磨剤の硬さによって作業時間や労力が変わってきます。
天珠の起源は定かではないのですが、同じくチベットから伝来した「チベタン・コーラル」と同様に、現在では「チベタン・ビーズ」と呼ばれています。
チベットの人々はこのビーズを大切にしており、古くから伝わる希少な宝珠と考えています。
このようにして、何千年もの間、たくさんの人々が身につけて生きてきたのです。
チベットを中心に、ブータン、ネパール、ラダック、インドなどにも分布しています。
新石器時代から、ハラッパー時代のインダス川流域やカンバトなどインドのメノウ鉱床の豊富な地域で、天珠型のメノウビーズが作られていました。
考古学的に管理された直線や曲線、円形の目の装飾が施された最古のメノウビーズは、紀元前7~5世紀のカザフスタンのサカ文化の発掘物から見つかったとされています。
これらはインドからの輸入品で、遊牧民であるサカ族やスキタイ族との長距離交易を反映していると言われています。
羊飼いや農民が土中や草原で天珠を見つけることがあります。
このようなことから、チベット人の中には、天珠は人工的に作られたものではなく、自然に形成されたものだと伝統的に信じている人もいます。
チベットの文化では、これらのビーズは、地元の守護者や神々、あるいは有益な霊、祖先、菩薩を引き寄せると信じられています。
このため、天珠は常に深い敬意を持って扱われています。
世界で愛される天珠
ドイツ イダー・オーバーシュタインのメノウ職人は、ローマ時代から商売をしていたといわれています。
彼らはメノウの色付けを科学的に行い、カットや穴あけをドイツ人ならではの機械的な完成度で行った歴史があります。
ハンドメイドの天珠の多くは出所が不明ですが、需要が高いため、比較的最近になってアジアでの複製が報告されています。
近年における天珠とその製造方法
最も説得力のある古代天珠のレプリカは、1990年代に台湾から来ました。
中国でも2006年頃から良質の天珠が作られるようにななりました。
近年の天珠はカット、穴の加工と装飾に何日もかかり、品質の良いメノウで作る必要があります。
レーザー、最新の化学薬品、真空チャンバーなどの最新の方法や技術を用いれば、精度の高いものを作ることが可能です。
特によくできた新しい天珠の中には、古代の老天珠に似ているので人前で身に着けてもわからない、という理由でチベット人に受け入れられているものもあります。
また、石の質が同じかそれ以上で、2つのビーズを一緒に保管したり、結合の儀式を行ったりすると、古代の天珠の保護エネルギーが新しい天珠に移行すると考える人もいます。
また、中国、台湾、タイ、シンガポールなどでも人気があります。
本物の古代の天珠は、ほとんどの人にとっては高価すぎて、何世代も天珠を所有していない人は、もはや買うことができないとされます。
しかも新品の天珠の中にはコレクション性の高いものもあり、価格も高くなっています。
新時代の天珠への祝福
いくつかの例外を除いて、新しいビーズは、古代のビーズのような神秘的な関連性を持っていないと考えられているが、いくつかの方法で新しい天珠に同様の力を与えることが可能であると信じられています。
1)僧侶の祝福を受ける
2)卒塔婆や神社などの聖地を巡礼する
3)真言を唱える、宗教的な誓いを立てる
などの方法です。
新しい天珠の利点は、以前の所有者の悪いエネルギーを持ち込まないこと、とされます。
塩水に数時間浸した後、お香を焚くことで悪いエネルギーを取り除くことができるといわれています。
また、日光に当てたりハーブを使うのもビーズを浄化すると言われています。
ただし、直射日光に長時間当てるのは退色の観点からおすすめできません。
天珠の模造品
模造品は、メノウやカルセドニー以外の素材で作られています。
ガラス、樹脂、骨、プラスチック、金属、または彫刻された石で作られています。
模造品といっても歴史は古く、数百年前に作られたものもあります。
そのため古い模造天珠には、コレクションとしての価値があります。
以前中国で見かけたのですが、樹脂製の模造品の中には高級感を増すために、鉛を入れて重さを増したものもありました。
また、機械で彫られ、機械で穴が開けられ、高度に磨かれた現代の新商品をレプリカ天珠と呼ぶ人もいます。
ほとんどの場合、大量生産されたこれらのビーズは、安価で入手でき、たまにフリーマーケットなどでも販売されています。
これらの安価なビーズの模様は表面的に加工されていて、装飾はビーズの内側のコア部分に浸透していません。
これらは通常、ラッキーな風水のお守り、ぐらいの品物として中国本土の顧客に販売することを目的とされています。
天珠の価値と値段
古代のビーズの市場価値は数千万円に達することもあり、特に “目 “のついたビーズはその傾向にあります。
また、メノウに含まれる鉄分による小さな赤い斑点も価値を高める要因。
新しいメノウ製の天珠の価格は、品質と光沢に応じて大体2000~5000円ほどで推移しています。
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天然石に魅せられて仕入れのために世界各国を飛び回る、Storiaの店長です。大阪市福島区で育った二児の父。学生のころからミネラルショーにも参加するほど石が好きで、中国やロシア、ブラジルに原石を探しに行ったり、アメリカでクリスタルヒーリングのセッションを受けたことも。特技は何でも食べられる(ようになった)こと。
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