私たちが手にする美しい天然石ビーズ。そのアクセサリーやブレスレットが、どのようにして作られているかご存知ですか?実は、原石から完成品になるまでには、驚くほど多くの工程と、職人たちの献身的な手作業が必要なのです。
今回は、天然石ビーズの加工業者の方からおうかがいした製造工程を詳しくご紹介します。その過程を知ることで、きっと手元の天然石がより愛おしく感じられるはずです。
※工程はあくまで一例です。
天然石ビーズ加工の全工程
天然石ビーズの加工工程は、詳しく分けると50以上のステップがあると言われていますが、ここでは主要な10〜12のステップに分けてご説明します。
ステップ1:原石のカット(四角形への切り出し)

世界中から集められた大きな原石を、まず扱いやすいサイズの「ほぼ正方形(タンブル)」にカットしていきます。これは、後の工程で効率よく丸く加工するための準備段階です。
この作業は想像以上に過酷です。天然石は非常に硬いため、切断には大きな音と粉塵が発生します。
四角く切るのは、丸いビーズを作るための最初のステップ。この段階で適切なサイズに切り分けることが、後の工程の効率を左右します。
ステップ2:初期研磨(粗削り)
四角くカットした石を、専用の研磨機械に一つ一つセットして、大まかな丸い形に削っていきます。この段階では、完全な球体ではなく、「だいたい丸い」程度の形状に仕上げます。
角を落として丸みを帯びさせる、最初の大きな変化が起こる工程です。
ステップ3:中間研磨(球体への成形)
粗削りで丸くなったタンブルを、さらに精密に研磨して完全な球体に近づけていきます。この工程では、より細かい研磨剤を使用し、均一な丸さを追求します。
ステップ4:後期研磨(表面の仕上げ)

球体になった天然石を、さらに細かく研磨していきます。ただし、この段階ではまだ穴は開いておらず、表面もフロスト状態(曇りガラスのような状態)でツヤがありません。
例えば、キャッツアイ効果で有名なタイガーアイも、この段階では何の石なのか分からないほど地味な見た目をしています。

美しい光沢は研磨によって支えられているんですね。
ステップ5:選別と追加研磨
丸くなったビーズを一つ一つチェックし、完全に丸くなったものと、まだ形が不十分なものを手作業でサイズ別に選別します。形が不完全なものは、再度研磨機にかけて完璧な球体に仕上げていきます。
ステップ6:穴あけ位置のマーキング
ここからが、職人の技術と経験が光る工程です。
丸くなったビーズ一つ一つに、穴を開ける位置に印をつけていきます。適当な場所に印をつけるのではありません。その石の模様や色の入り方を見極めて、「どの位置に穴を開けたら最も美しく見えるか」を考えながら印をつけていく、まさに気の遠くなるような作業です。
同時に、この段階で不良品と良品の選別も行われます。
ステップ7:穴あけ
マークを目印に、ビーズを専用の機械にセットして穴を開けます。穴を開ける場所を上にして固定し、ダイヤモンドドリルなどの専用工具で正確に穴をあけていきます。
ステップ8:穴の研磨
穴が開いたビーズを鉄棒に通し、再度研磨機にかけます。この工程では、表面に美しいツヤを出すと同時に、穴の内側も滑らかに磨き上げます。
穴の内側がざらついていると、紐を通したときに引っかかったり、紐が傷んだりする原因になるため、この工程は非常に重要です。
ステップ9:鉄棒を外す
研磨が完了したら、鉄棒からビーズを外します。
ステップ10:穴の仕上げ研磨(2回目)
天然石の穴をさらに美しく仕上げるために、もう一度穴の研磨を行います。2回の穴研磨を経ることで、紐通りの良い、品質の高いビーズが完成します。
ステップ11:最終選別(グレード分け)
完成したビーズを、専用の道具を使って「サイズ別」「品質グレード別」に細かく分類していきます。
透明度、色の濃さ、内包物の有無、傷の有無など、様々な基準で厳しくチェックされ、AAAグレード、AAグレード、Aグレードなどに分けられます。
ステップ12:連に仕上げる
最後に、同じサイズ・同じグレードのビーズを選び、紐を通して約38〜40cmの「連ビーズ」に仕上げます。また、ブレスレット用にゴムを通して完成品にする場合もあります。
まとめ:一粒一粒に込められた想い
たった一粒の天然石ビーズが、原石から私たちの手元に届くまでには、これほど多くの工程と、数え切れないほどの人の手が関わっています。
危険を伴う原石のカット作業から始まり、何度も繰り返される研磨、一つ一つ手作業で行われる穴あけ位置のマーキング、そして最終的な品質チェックまで。各工程にプロフェッショナルな職人がいて、黙々と、そして丁寧に作業を続けています。
次に天然石のアクセサリーを手に取ったとき、その一粒一粒に込められた職人たちの技術と努力を思い出してみてください。きっと、その輝きがより特別なものに感じられるはずです。
天然石ビーズは、地球が何億年もかけて作り上げた原石と、人の手による丁寧な加工が融合した、まさに奇跡の結晶なのです。

天然石に魅せられて仕入れのために世界各国を飛び回る、Storiaの店長です。大阪市福島区で育った二児の父。学生のころからミネラルショーにも参加するほど石が好きで、中国やロシア、ブラジルに原石を探しに行ったり、アメリカでクリスタルヒーリングのセッションを受けたことも。特技は何でも食べられる(ようになった)こと。


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