お客様より「旅行でインドに行く予定があるため、パキスタンの水晶をインド経由で仕入れたいが可能か」というご質問をいただきました。現在の両国の貿易状況を考えると、直接的な貿易はかなり難しいと言わざるをえません。第三国を経由した迂回貿易が現実的です。
インド・パキスタン間の貿易は大幅に制限中
- パキスタンとインドの間では、政治的緊張の高まりから、二国間の貿易が厳しく制限または停止されている状態が続いています。特に2019年以降は顕著ですね。
- ジェトロの情報によると、パキスタンは原則としてインドからの輸入、インド原産品の輸入、インドへの輸出を禁止しており、治療薬など一部の例外を除いて貿易は行われていないんです。
- なので、水晶のような鉱物資源の貿易にも当てはまります。
第三国を経由する「迂回貿易」
- 両国間の公式な貿易ルートが閉ざされているため、実際にはドバイやシンガポールなどの第三国を経由して商品が取引されることが多いです。これを「迂回貿易」と呼びますが、当店でも行っています。
- この場合、パキスタンで採掘された水晶が、まず第三国に輸出され、その国から日本のバイヤーによって輸入されるという流れになります。
ヒマラヤ水晶の産地としての共通性はありますが…
【結論】
- 政治的な理由で直接取引ができないため、ドバイなどの第三国を介して輸入する(迂回貿易)。
- インドの天然石バイヤーや加工業者から仕入れる。
のいずれかで買い付けするのがおすすめです。
現地(パキスタン)に直接行くのはおすすめしません
パキスタンは魅力的な鉱物資源の産地ですが、渡航には注意が必要!採掘者に最も近い場所で、最高品質の原石を選べるのは魅力ですが、鉱山地帯は山奥にあるため、アクセスが非常に困難。
価格中間マージンがかからず、最も安く仕入れられる反面、治安や安全面でリスクを伴う地域でもあります。特に北部山岳地帯は日本人観光客が行くのには不向きすぎる。
言語(ウルドゥー語、現地語)や商習慣の壁があるので、信頼できる通訳やガイドの確保が必須となるでしょう。
オマケに、多額の現金を持ち運ぶ場合、手続きも必要になります。代理店を通して購入したほうがはるかに安くつきますね。
インドとパキスタンの貿易が大規模かつ全面的な制限に入ったのは、2019年8月です。これは、カシミール地方を巡る両国間の長年の対立が、この時期に特に激化したことが原因です。
制限の開始時期と背景
時期 | 出来事 | 影響 |
2019年8月 | インド政府が、ジャンムー・カシミール州に認めてきた特別自治権を剥奪する措置(連邦直轄領への再編)を発表しました。 | パキスタン政府はこれに対し、インドとの外交関係を格下げし、二国間の貿易を全面停止する措置を取りました(領空の閉鎖なども実施)。 |
この措置以降、パキスタンは原則としてインドとの間の輸出入を禁止しており、水晶のような一般的な貿易品目は、この停止措置の影響を強く受けています。
歴史的な背景
もちろん、インドとパキスタンは1947年の分離独立以来、カシミール問題などを原因として何度も対立しており、貿易関係は常に不安定でした。
- 例えば、2019年の全面停止の前にも、2019年2月のプルワマ襲撃事件の後、インド側がパキスタンに対する最恵国待遇(MFN)を廃止し、関税を大幅に引き上げるなどの措置を取っています。
しかし、「パキスタン側がインドとの二国間貿易を中断した」という決定的な措置が取られ、現在に至るまで厳格に続いているのは、2019年8月以降の状況です。
したがって、パキスタンの水晶の取引で他国を迂回するようなルートが使われているのは、この2019年8月以降の貿易停止措置が大きく影響しています。

天然石に魅せられて仕入れのために世界各国を飛び回る、Storiaの店長です。大阪市福島区で育った二児の父。学生のころからミネラルショーにも参加するほど石が好きで、中国やロシア、ブラジルに原石を探しに行ったり、アメリカでクリスタルヒーリングのセッションを受けたことも。特技は何でも食べられる(ようになった)こと。
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