「愛の守護石」として絶大な人気を誇るパワーストーン アメジスト。気品を感じさせる紫は、国や時代を超えて愛され続けています。その特徴から産地、主な加工方法や値段についてまとめました
アメジストのお手入れ方法
基本的には耐久性のある宝石で、日常的に身につけるのにピッタリです。
アメジストは指輪やブレスレット、ネックレスなどあらゆる種類のジュエリーに使用することができ、また彫刻、ビーズ、装飾品にも使用されています。
お手入れをする時は、中性の食器用洗剤で洗ってください。
ホコリが溜まりやすい石の裏側は、歯ブラシを使って優しくブラッシングするのがオススメ。
高熱にさらすと色落ちの原因となるので注意。
また、内包物があるアメジストを超音波洗浄機で洗うと、破損の原因になります。
機械的な洗浄方法は避けて、柔らかいブラシと中性洗剤、ぬるま湯で洗うようにしてください。
産地ごとの特色
アメジストの産地を当てるのは難しいですが、大まかな傾向はあります。
画像はザンビア産のアメジスト。
条痕が少なく、深い紫色をしているのが特徴です。
その他、アメジストは主にブラジル、ウルグアイ、ボリビア、アフリカのザンビアやナミビアなどで採掘されます。
また、アリゾナ州のフェニックス近郊にあるフォーピークス鉱山でも少量のアメジストが発見されています。
ブラジルからは大粒の石が産出されるが、色の濃さは中位が多い傾向にあります。
アメジストのファンにはザンビアや、最近ではウルグアイから産出される、小さくても色の濃い石が人気ですね。
アメジストの特徴
アメジストは、サファイア、スピネル、ロードライト・ガーネットなど、人気のある透明な宝石とは一線を画しています。
これらの宝石には紫色のものがほとんどないので、濃い紫色を取り入れるためにはアメジストがほぼ一択になるわけです。
さらに宝石には光学的、物理的な性質に大きな違いがあります。
サファイア、スピネル、ロードライトはいずれも屈折率が高く、スピネルとロードライトは等比級数であり、比重の値も大きいんです。
色が近いものは似ているように見えるかもしれませんが、全く別の宝石なのです。
アメジストとアメトリンの違い
アメトリンは、紫と黄色の2つの異なるカラーゾーンを持つ水晶の一種です。
このカラーゾーンは水晶が地中で作られる際に、双晶と呼ばれる成長を繰り返した結果です。
紫色がアメジスト、黄色がシトリンであることから、アメジストとシトリンのゾーンで構成されていることを意味しており、「アメトリン」という名前が付けられました。
通常、アメトリンは2つの色を際立たせるために、長方形のエメラルド・カットにカットされます。
こちらはアメトリンを使用したブレスレット。
アメジスト寄り、シトリン寄りのものが混同しています。
薄いライラック色から深く強いロイヤルパープルまで
アメジストは、石英系の鉱物の中でも紫色のものを指します。
サファイアやタンザナイトなどの紫色の宝石がある中で、最も紫色を連想させる宝石といって良いでしょう。
その紫色は、青みがかったクールなものと、ラズベリーと呼ばれることもある赤みがかったものまで多彩。
他には薄いライラック色から深く強いロイヤルパープルまで、また茶色がかったものから鮮やかなものまであります。
アメジストの値段って高い?
かつてシベリアの鉱山では、世界最高の石が産出されていました。
その中でも特に深い紫色をしており、赤や青の輝きを放っていたのです。
ところが、現在ではシベリア産のアメジストに似た色のものを「シベリア産」と呼び、取引やグレードの基準となっています。
相変わらずシベリア産が価値のトップを占めていますが、淡い色のアメジストも人気が復活しています。
淡いピンクがかったバイオレット色のものは「ローズ・ド・フランス」と呼ばれています。
ファンシーで珍しいカットが施されていれば、宝石のファセットの芸術性が光る逸品となります。
人類とアメジストの関係
アメジストは何千年も前から人々に愛されてきました。
そのワインのような深い色合いから、初期のギリシャの伝説では、アメジストはワインの神バッカスと関連付けられていました。
アメジストを身につけることで酔いを防ぐことができると信じられてきたのです。
また、装飾品として身につけると、頭脳が明晰になり、戦いやビジネスの場面で頭の回転が速くなるという伝説もありました。
近年、一番身近なのは指輪やネックレス、そしてブレスレット。
スモーキークォーツやシトリン、水晶と組み合わせるととっても可愛らしく仕上がります。
古代エジプト人は、この丈夫な宝石を動物の形に彫って、身を守るお守りとしていたようです。
古代ギリシャでは、アメジストの彫刻やジュエリーが作られ、古くから宗教的なジュエリーや王室の王冠の宝石として使われてきました。
ルビー、エメラルド、サファイアと同様に重宝されてきた歴史があります。
英国王室の戴冠式に、アメジストが使われているのも不思議ではありません。
さらに、司教の指輪には「信心深さと独身の象徴」としてアメジストがセットされていました。
レオナルド・ダ・ヴィンチは、アメジストには邪悪な考えから身を守り、知性を研ぎ澄ます力があると記しています。
仏教徒は、アメジストが瞑想の平和と静けさを高めると信じており、今日でもチベットのロザリオにはアメジストが選ばれています。
このように、例を挙げだすとキリがないほど歴史上で愛されてきた宝石なんです。
合成アメジスト
アメジストは研究室で水熱的に成長させることが可能で、メーカーは特別に用意したスモーキークォーツにガンマ線を照射して作っています。
ただし、天然のアメジストは非常に豊富で値段もそんなに高くはないため、合成品が販売される機会はあまりないのが実情です。
加熱することで色が変化する特性もあり
アメジストは様々な加工で色を変えることができます。
しかし、厳密に言えば、ライラック色から深い紫色をしたものだけがアメジストです。
それ以外の色になったものは、別の名前が付けられます。
例えば、黄色や赤橙色に変化したアメジストは、定義上はシトリンとなります。
熱処理によってアメジストは明るくなり、緑や青、黄橙色になります。
400~500℃に加熱すると、アメジストは褐色、赤色、時には緑色に変化することがあります。
このようなグリーンクォーツの宝石は、一般的にはプラシオライト(グリーンアメジスト)と呼ばれています。
石の大きさと透明度
ほとんどのアメジストはかなり大きく成長して、数千カラットの宝石にカットされます。
ただ、100カラット以上のアメジストで上質なものはかなり希少。
透明なアメジストもよく見られますが、大きなカタマリで発見されることはほとんどありません。
スミソニアン博物館(ワシントンD.C.)には、1,362ctのブラジル産や202.5ctのノースカロライナ産など、高品質な透明のアメジストが所蔵されています。
アメジストの伝説
アメジストは、古代ローマ人がバッカスの酩酊を防ぐために、お守りとして身につけていました。
アメジストの語源はギリシャ語の “amethystos “で、”酔っていない “という意味です。
アメジストの起源の伝説は、ギリシャ神話に由来しています。
酔いの神ディオニュソスは、ある日、怒りにまかせて自分の前に現れた人間に復讐を誓い、その願いを叶えるために獰猛な虎を生み出しました。
そこに現れたのが、女神ダイアナへの貢ぎ物をしに行く若く美しい乙女、アメジスト。
怯えた少女を守るため、ダイアナは彼女を純粋な水晶の像に変えました。
その光景を見たディオニュソスは、自責の念からワインの涙を流したといいます。
神の涙は水晶を紫色に染め、今日のような宝石が生まれた、という物語です。
ジュエリー素材としての評価
ジュエリーデザイナーたちからは、アメジストこそが宝飾品にとって最適な宝石である、と評価され続けています。
その理由は、王道の色、さまざまなサイズや形、手頃な価格、そして淡いラベンダー色から濃い紫色までの幅広い色調にあります。
アメジストは、暖色系と寒色系の両方の色を引き立てるので、イエロー系とホワイト系の両方の金属に合わせても違和感がありません。
このカメレオンのような性質は、ほとんどすべての色を引き立ててくれます。
今日、最も価値のある水晶として、アメジストはデザイナーの作品から大衆向けのジュエリーまで幅広く求められており、その紫からパステルカラーの色合いはパワーストーンのファンにも広く受け入れられています。
アメジストの組成
化学的性質 SiO2
色:紫
屈折率 1.544〜1.553
複屈折 0.009
比重:2.66
モース硬度:7
アメジストについての記事
天然石に魅せられて仕入れのために世界各国を飛び回る、Storiaの店長です。大阪市福島区で育った二児の父。学生のころからミネラルショーにも参加するほど石が好きで、中国やロシア、ブラジルに原石を探しに行ったり、アメリカでクリスタルヒーリングのセッションを受けたことも。特技は何でも食べられる(ようになった)こと。
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